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正式ローンチ11ヶ月でARR約2億円に到達。2つめのサービス「LegalForceキャビネ」開発苦労話

AI契約審査システム「LegalForceキャビネ」が正式ローンチしてから11ヶ月で300社導入、ARR約2億円を達成しました。

スタートアップ企業が新規事業に取り組むことは、限られたリソースを分散させることでもあり、事業成長の観点から懸念されることがあります。 しかし「LegalForceキャビネ」は、主力のサービスであるAI契約審査プラットフォーム「LegalForce」がまだ盤石ではない頃に構想され、開発に着手されました。

これまでにどのような意思決定や葛藤、紆余曲折があったのか。開発組織を率いるCTOの時武にインタビューしました。

時武 佑太
取締役CTO(Chief Technology Officer)
東京大学大学院 情報理工学系研究科創造情報学(修士)修了。2016年4月 株式会社ディー・エヌ・エー入社。ヘルスケア事業でアプリエンジニアとして従事。Android, iOSアプリ開発からサーバー側開発やデータベースのパフォーマンス調整まで幅広く担当。2017年9月LegalForce参画。現職。TechCrunch Tokyo CTO of the year 2019受賞。

ようやくスタート地点に立てた

――はじめに「LegalForceキャビネ」300社導入、ARR約2億円を達成した感想をお願いします。

驚いている、というのが率直な感想です。2021年1月に正式版をリリースして5月に100社導入を達成し、8月末で200社。そこから一気にペースが上がって11月に300社ですから。

開発としても苦労しましたが、やはりこれだけ早く結果が出たのは、Salesメンバーの力が大きかったと実感しています。ただサービスを売るだけではなく、お客様からフィードバックをいただいて、それを私たちに的確に伝えてくれたからこそ、サービスの改善や機能を追加することでより使いやすくなり、加速度的に導入件数が増えたのだと考えています。

――具体的にどのような改良をされてきたのですか?

更新期限や契約終了日が近い契約書をAIが自動で検出して通知してくれる「更新期限通知」を追加し、ユーザー管理機能も強化しました。

他にも細かい改善をコツコツ積み重ね、お客様からも「初期の頃と比べてだいぶ使いやすくなった」というお声を頂戴するようになりました。7月から急激に導入件数が増えたのは、これらの改良が大きかったのではないかと考えています。

今後は契約書に潜む法的リスクを自動で検知する「リスク検知機能」も追加していきたいと考えています。

――いまサービスとしては、どんなフェーズですか?

2021年1月に正式版がスタートしましたが、機能は不十分でした。開発もなかなか進まず、右往左往して「LegalForceキャビネの価値とは?」と迷走したこともあります。導入してくださるお客様が増え、市場の存在が確認できて、サービスのコンセプトが固まろうとしている段階で、今ようやくスタート地点に立てたのかと思っています。

まだたくさんの機能を追加していきたいですし、Salesのメンバーと連携してお客様の声をさらにサービスに反映していきたいと考えています。

「LegalForceキャビネ」の開発経緯

――なぜ「LegalForceキャビネ」を開発することになったのでしょうか?

「LegalForce」は、AIで契約書のレビューを行うシステムです。契約業務において、契約書に自社に不利となる条項、リスクになりうる条項がないかチェックを行うことは非常に重要でミスが許されません。LegalForceはこの契約書レビューの品質を高め効率化することが可能です。しかし契約業務はレビューだけではありません。

「LegalForce」を提案するなかで、多くの企業が契約書の管理に課題を抱えていることが見えてきました。会社が成長すればするほど、契約書の量も増えて管理が煩雑になります。
もともと契約業務フローを全てテクノロジーの力で改善したいという構想はあり、契約管理の課題は「LegalForce」の開発で培ってきた技術で解決できることがわかってきました。
そのため「LegalForce」もまだ立ち上がって間もなかったのですが、2つめのサービスとして「LegalForceキャビネ」の開発を決めました。

2人からスタートした開発組織

――開発はどのようにスタートしたのですか?

開発に着手したのは2020年1月。当初は私と他1名のエンジニアのみでした。そして、2020年の夏、プロトタイプができあがったくらいのタイミングで「LegalForce」の開発メンバーからヘルプに来てもらい、さらにその後も徐々にメンバーが増えてきました。

――若手メンバーが多いと聞きました。

そうですね。「LegalForceキャビネ」の開発組織は、社歴が浅く若手のメンバーが中心でした。新しく開発するサービスなので、過去の開発などについて把握していなくても支障が少ないという点から、新たに入社してくれたメンバーに参画してもらいました。

――不安はありませんでしたか?

開発経験やスキルがある人材が入社しているので、それほど大きな不安はありませんでした。一方で「LegalForceキャビネ」の開発組織が大きくなり、組織編成を行う中でチーム構成や権限委譲については判断に迷うことはありました。

ただ、権限委譲などはメンバー各人のスキルや主体性の向上にもつながったので、結果的によかったと考えています。

コミュニケーションがとれない……開発組織の紆余曲折

――コロナ禍の影響で完全リモートワークになりましたが、影響はありましたか?

ありました。「LegalForceキャビネ」の本格的な開発はコロナ禍の真っ只中に開始されました。コロナ禍で参画したメンバーがほとんどだったので、対面で話す機会がほとんどなく、相互理解には苦労をしました。
たとえば、遠慮があってミーティングで思うように話せず、あとからチャットで「実はこう思っていた」「やはり違うんじゃないか?」という話になり、開発がストップすることがありました。

――6月以降に雰囲気が大きく変わりましたね。

はい。5月まではフルリモートだったのですが、6月に感染が落ち着いてきたのでチームビルディングのため期間限定で週3日の出社日を設定しました。まずは対面でのディスカッションやランチなどを実施し、とにかくメンバー同士で話す時間を増やしました。お互いに人となりが理解できてコミュニケーションがとれるようになり、組織全体の雰囲気も変わってきました。

――特にメンバーと話す際に心がけていたことはありますか?

とにかくまずは対面で話すこと。リモートワークが普及してきましたが、やはり対面にまさる情報量はないですから。あとは自分の素が出せる環境づくりです。雑談も大切だと思います。その人の好きなこと、嫌いなことを知ることで、お互いの考え方がわかります。

8月から再度緊急事態宣言が出されてフルリモートに戻ったのですが、リモートであっても雑談ができるくらいの関係が構築できていたため、スムーズにコミュニケーションがとれるようになりました。

「2つめのサービス」ならではの苦悩

――今課題と感じられていることはありますか?

私自身がいかに「LegalForceキャビネ」の提供価値を言葉にして伝え、チームに浸透させ、一丸となって開発に向き合っていけるかが重要と考えています。組織の雰囲気はよくなってきました。ただ、「LegalForceキャビネ」をもっと良いサービスにするためにはさらに熱量を上げていかなければならないと感じています。「LegalForceキャビネ」が成功しないと会社の未来もない。その危機感をメンバーに伝え、「何のためにサービスをつくっているか?」を日々共有しています。

――どのようなところに難しさを感じていますか?

1つめのプロダクトでもある「LegalForce」は全メンバーが、その開発やセールスに全力で投入していました。全員が同じ方向を向いて、同じだけの熱量でプロダクトに対峙できていたと思います。しかし、セカンドプロダクトにもなるとそうもいかない。すでに走り始めて世の中に受け入れられて、利益を生み出しているファーストプロダクトの横で、少人数で試行錯誤しながら世の中に受け入れてもらえるかわからないプロダクトの開発をするわけです。

プロダクトを立ち上げて事業化し成長させるのは、ファーストでもセカンドでも、おそらくサードでも至難の業です。片手間で成功できるほど甘くはないことを「LegalForce」の開発で痛感しています。いま、CEO、COO、そしてCTOである私も「LegalForceキャビネ」を軌道に乗せるために、全力で向き合って試行錯誤を続けています。

 「LegalForceキャビネ」の開発組織の醍醐味

――「LegalForceキャビネ」の開発では、どのような点に面白みが感じられましたか?

サービスを創り出してリリース、その後グロースのために試行錯誤するという、0から10を経験できる点ですね。「LegalForce」は立ち上げ期は終わり、今は機能追加やサービス改良の段階ですが、「LegalForceキャビネ」は開発の仕組みや流れをつくり、新しい開発組織を立ち上げていくことに面白みを感じています。メンバーにとっても自発的に、裁量を持って働けるという点ではやりがいがあるのではないでしょうか。

――「LegalForce」の開発の経験が役に立ったと思われたことはありますか?

「LegalForce」での0→1、1→10、10→100の経験が、非常に役に立っています。サービスの機能面しかり、開発の流れしかり。特に苦い思い出ほど、「LegalForceキャビネ」に活かすことができていると実感しています。

――今後の意気込みを教えてください。

「LegalForceキャビネ」の開発組織は拡大期を迎えています。以前は開発組織全体の2割にも満たない規模でしたが、今では3割ほどになってきました。組織が成長していくと、今までのやり方は通用しなくなってきます。目標や個々の考え方、危機感を共有することがより難しくなってくるからです。そのためには、サービスの向上だけでなく、さらなる仕組みづくりや組織開発も進めていく必要があるでしょう。

先程もお話したとおり、私は「『LegalForceキャビネ』が成功しないと会社の未来はない」考えています。責任やプレッシャーは大きいですが、どこまでいけるか、みんなで勝負していきたいですね。

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